こんにちは!朝山家の聡士(@HbHlUnRqYkjbRMQ)です。
大分県豊後大野市の限界集落から発信しています。
気づけばもう夏の終わり。
里山は夕方から一気に涼しく、秋の気配さえ漂います。
棚田もいっせいに美しい稲穂が出てきました。
今日もリビングの窓からは、山と棚田の美しい日本の原風景が広がっています。
写真:近所の田んぼと由布岳とくじゅう連山(8月下旬)
朝山家がある場所は、緒方町の軸丸という南にある集落です。
ちなみに、軸丸北という集落もお隣にあります。
農業振興地域に指定されていて、どちらとも棚田が美しい里山です。
所在地:大分県豊後大野市緒方町軸丸区
山の上での米づくりは、とっても大変。
軸丸区の棚田での水稲栽培は農業機械が入らないので、
手作業での除草作業や植え付けをする場所もあります。
草刈りを定期的にしなければ、
農道すらあっという間に自然に飲み込まれてしまいます。
また、農業用水の水利や水路の維持も大変。
そんな条件が悪い中で、棚田や景観を維持してきた地元の農家さんにお話を聞いてみました。
棚田米について
軸丸棚田の環境として、緒方平野より標高が高いので、民家が少ないのが特徴。
生活排水が流れ込む心配がないです。 すなわち、上流域で水が綺麗。
また、高台にあり上流に田んぼがないので汚い水や、
農薬が混じった水が流れ込むこともありません。
山の中だから、害虫が多いんじゃないの?
と思うかもしれませんが、
標高が高いので、平地より気温がそこまで上がらないため、
害虫の発生が比較的少なく、農薬の使用も抑えることができます。
棚田米は減農薬・減化学肥料での米作りが必然的に多くなります。
緒方町軸丸集落で見つけた農家にとっては害虫の「セセリチョウ」の記事
なにより自家用や棚田での米作りをする田んぼで、
自ら環境を害する米作りをする生産者はあまりいません。
また、山間部で気温差が大きいことが棚田米の美味しさの一つとのことです。
地域の方に聞くと、緒方平野の米に比べたら「軸丸棚田米」は、
格段に香りが強く美味しいと評判とのこと。
棚田米はあまり流通しない
地元のスーパーや、道の駅に行って探しても
「棚田米」はあまり見当たりません。
その理由は、地域の方の話を聞くと”2つのパターン”があるようです。
パターンその01「自家消費と縁故米」
地域の方に話を聞くと、
と言う方が結構いらっしゃいました。
日本全体で約三分の一が自給的農家という統計もありますが、
中間産間地域の棚田はとりわけ生産量が少なく、
自家消費やいわゆる「縁故米」になり
市場へは出回らないというパターンが多いとのこと。
高齢化の影響や肥料の高騰で、
年々米を作る農地も減る一方なのが非常に残念です。
個人でお米を販売していた方も!
自家消費や縁故米に加えて道の駅などでの販売、
さらには顔見知りにあげたり売ったり。
他の地域では、生産組合や農業法人などの組織で計画的に販売するパターンもあるようです。
また棚田の価値に注目する米穀店に卸すこともありますが、
自前の販売ルートをもっていない農家は農協に出荷せざるをえません。
「うちの地域は8割ぐらい農協にだしている」
「半分以上は農協に行っている」
と言う声もききました。
パターンその02「棚田米が棚田米として販売されない」
農協に出荷する際に、巨大な組織「農協」は細かい区分を苦手とします。
農協の区分の基本は「品種」と(ある程度の広さを持った)生産地域。
一軒の農家で棚田と平野部での田んぼを両方耕作したりしている場合、
最初から計画しないと受け入れ時に区別するのは不可能です。
「杭掛乾燥の棚田米」と「コンバインで刈り取った平地のお米」が混じるのは、
棚田米に価値を感じている筆者からみれば
「かなりもったいない!」
と思いますが、
現在の農協のシステムで見る限り全く不思議ではないのです。
農協に出しても他のお米と混じってしまうのならば、
手間隙かけてかけ干しすることなんてやめてしまいます。
「棚田米として売れる仕組み」が整っていない現状では、
棚田米はまだまだ一般の消費者にとっては高級品だと思います。
写真:近所の田んぼ(8月中旬)
山の上の米づくり!水はどこから?
私たちが住む場所は約標高300メートル。
さらに標高が高い上の集落にも棚田が広がっています。
どうやって水を引いているの?と思う方もいるかもしれません。
なんと、隣のまち(竹田市白山ダム)から山を超えて里山に水が来ています。
写真:みんなで水路の維持管理をする様子(7月下旬)
条件が不利な地域でも、お米を作ろうという思いがすごい!
ちなみに、その水利のために尽力した方は「後藤鹿太郎」さんという方で
軸丸区のローカルヒーローの歴史やその逸話は、代々地域で受け継がれているようです。
深堀して知りたい方は、こちらをどうぞ!
国立国会図書館デジタルコレクション:日本の棚田百選にも選定されている「軸丸北の棚田」について
水利に尽力した「後藤鹿太郎」の亡き後を訪ねて
地域の方に場所を教えてもらい、
「後藤鹿太郎」さんのお墓を尋ねたのですがお墓はかなり立派でした。
地域に貢献した度合いがお墓から見て取れました。
※ちなみに、私道なのでgoogleMAPには載っていません。
農業インフラの水路の維持管理
年に二回、私たちの地域では水路の周りの除草作業を行います。
ちなみに私は農家ではありませんが、できる限りお手伝いをさせていただいています。
棚田があるところは、田んぼというより山の中。
もはや山林整備(山の下刈り)のような一日仕事でとても大変な作業です。
その時のことを備忘録として残しているので読んでみてくださいね。
棚田米が美味しい理由
美味しさの秘密は、標高による寒暖差と綺麗な水が理由のようです。
近所の米農家さんに聞くと、
「平野部と違って木陰ができることも理由。ずっと太陽の日差しが稲に照り続けるのはいかんのよ」
とニコニコしながら教えてくださりました。
棚田米の味の特徴
食べてみたらわかる!というのが率直な感想ですが、
実際に食べている筆者の感想としては、
甘みが強く、もっちりと炊けることやお米の香りがスーパーで販売されているものとは全然違う香りです。
※特に、炊き上がる直前の香りが全く他のお米と違うので香りにびっくりします。
夕飯の際は、「羽釜でシャッキリと」
朝食は「土鍋でもっちりと」。
地域で収穫したお米が主役の食の体験です。
ぜひ宿泊の際は、味わってみてくださいね!
イノシシなどの害獣から軸丸棚田米を守る
写真:集落のみんなで協力し罠を仕掛ける様子(8月下旬)
山深い分、野生の動物もいっぱいです。
地区によって、現れる動物の種類も様々です。
せっかく育てた棚田米も、収穫の時期にイノシシに食べられてしまうこともあります。
米農家さんは、年に一回箱わなを移動する作業も協力して行います。
お米を育てるだけではなく、米づくりのための関連した仕事がたくさんあり大変です。
ちなみに、地域の農家さんの手助けになればと、
私たち夫婦は狩猟免許(わな)を取得しました。
まだまだ初心者の私たち夫婦。ペーパードライバーのようなものです。
先輩猟師さんから学び、美味しいジビエもとっていきたいところです。
棚田米の収穫時期
写真:朝山家の前の田んぼ(9月初旬)
いつも私たち夫婦を気にかけてくれるおばあちゃんに
「棚田米はいつ収穫するの?」と聞いてみたところ、
今年は10月10日から収穫を始めるとのこと!
新米の季節まであと少しです。
ちなみに収穫したお米は乾燥機で乾燥させますが、
皆さんお米の乾燥機を持っていらっしゃるようでさすが米農家さんだなと思いました。
筆者の思うところ
農業の大変さや、「棚田米の価値」について拙い文章ですが少しでも伝わったでしょうか?
普段何気なく購入したり当たり前に食べているお米。
お金を出せば簡単に手に入るものも、作り出されるまでにかなりの苦労が詰まっています。
そんな農家さんの汗水たらして作る過程やストーリーに触れることで
「ご飯は一粒残さずに食べよう」という食の大切さを再確認することができました。
田舎の原風景に触れ、旬のものを味わい、山の空気を吸うことで
自分の中にたまっていた色んな想いや農家さんの顔が思い出される気がします。
移住してきたばかりの頃は、
農家さん(生産者)から随分と離れていたところにいたのだなと実感させられます。
これからも、この大変な時代ですが
美味しいご飯を食べることができることに感謝しながらここまでにしたいと思います。
終わり。
(2022/08/29)
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