こんにちは!朝山家の聡士(@HbHlUnRqYkjbRMQ)です。
大分県豊後大野市の緒方町の里山の集落から発信しています。
今回は、人間が生きていく上で必要不可欠な水の問題です。
何気なく普段、蛇口をひねって使っている水。
お風呂に入る時、トイレで水を流す時、料理を作る時、洗濯をする時。
皆さんは、水が使えるのは当たり前のことだと思っていませんか?
それは”誰かがしてくれているサービス”なのです。
地震や台風など自然災害が起こったとき都市部では、
水を求めて並ぶ人々の映像をメディア媒体などで放送します。
それは、誰かが作り上げた設備、サービス、しくみなどが
一時的に利用できないということと同じだとわたしは考えます。
被災地域ほどではありませんが、田舎であればあるほどインフラ面ですら自分たちの力でなんとかしなければならない状況に陥るのです。
しかし、自分たちの住む地域は自分たちで守る。それが、地域づくりに繋がっているのかもしれません。
今回は、限界集落、いや、危機的集落の住人みんなで管理している水源地までの道を水を使う人たち自身で整備するまでのお話です。
一日の生活でどのくらいの水を使うの?
まずは、日本人はどのくらい一日に水を使用するのか調べてみました。
東京都水道局の質問にこんな内容がありました。
回答; 令和2年度に都内で使われた水道の使用量は、
一日平均412万立方メートルです。そのうち、約7割が家庭で使われています。
各家庭での水道の使用量は、ご家族の構成や人数などによって異なりますが、令和2年度に水道局が東京都の区部と多摩地区を対象に行った「生活用水実態調査」では、世帯人員別の一ヵ月当たり使用水量は下表のとおりとなっています。
世帯人員 | 使用水量 | 世帯人員 | 使用水量 |
---|---|---|---|
1人 | 8.1m³ | 4人 | 23.1m³ |
2人 | 14.9m³ | 5人 | 27.8m³ |
3人 | 19.9m³ | 6人以上 | 34.1m³ |
令和2年度生活用水実態調査 引用:東京都水道局
要するに、1年間に1人が使用する水の量は8.1m³×12ヶ月=97.2m³
約100m³/年・人
里山で暮らす私たちの暮らしに必要な水のこと
令和2年度の朝山家の水道使用量はというと…。
年間使用料229m³であり、夫婦ふたり分なので229m³/2人=114.5m³
約114m³/年・人となりました。
民泊朝山家〜あさやけ〜開業のための改修作業などで水をかなり使用したので、生活する上での水の量は平均以下でした。
下水の処理にかかるお金
私たちの住む緒方町の里山は、標高300m以上の場所。
そもそも公共下水処理インフラがありません。
そのため、各家庭に合併浄化槽という下水処理をする設備があります。
コンクリートに丸い蓋がついているこんなやつ↓
私たちは豊肥環境センターという市に委託を受けた会社に依頼をしており、
定期的に管理やメンテナスを行ってくれます。
下水料金は朝山家の場合ですが、定額 ¥ 3,170/月です。
※浄化槽のサイズや使用人数によって変動します。(うちの場合は5人槽)
はじめての土木作業【道づくり】
前置きはさておき、本題に入っていきます。私たちの住む地域の話に戻ります。
わたし自身は初めての道づくりで驚きを隠せませんでしたが、道を作ると決まり集落の方々は何も驚きません。
なんと、ベテランの方や本職の方もいらっしゃいました。
整地・法面の整備
集落の方で、ユンボを使用できる方がいたので事前にみんなが作業しやすいように、急勾配の山道のような道を整備してくださいました。
四駆の軽トラでさえ、走行中に車ごと落ちかかり九死に一生を得たこともあったそうです。
コンクリートの量と配合
コンクリートの運搬については、地域の生コン屋さんに頼み運んでもらいました。
運んでくれるのは公共の道路まで。農道まではユンボで運んでいきます。
その量なんと21.5m^3
道の長さなんと130m
コンクリート車が入らない条件不利地での戦いです。
コンクリート打設
水源地までの農道舗装は朝の8:00から始まりました。
皆さん、この日は仕事を休んで作業します。
わたしも仕事を休んで参加しました。
写真左の法面が削られており、ずいぶんと道が広くなっています。
生コン車から、ユンボに生コンを入れて運んでいき、対象の位置で流していきます。
生コンが底を尽きると、次の生コン車が次々とやってきてお祭りのようでした。
私の仕事は、トンボという道具で均し作業です。均す厚みを先人に教えてもらいながら、怒られながらやりました。
少しずつトンボを動かしながらならすのがコツ。土建屋さんになった気分でした。
車が滑らないように線引き
トンボでコンクリートを均した後は、ホウキで線を入れていきます。
これは滑り止めの役割をします。
もう車ごと落ちる心配はありません。
『名前と日付を入れたら?』と皆さんに言われたので、記念に入れておきました笑
写真には写っていませんが、道のどこかにあるはずです。
写真を撮っておけばよかったと後悔しましたが、そんな余裕はありませんでした。
地下に埋まった水道管をつなぎ直す
わたしたちの住む地域は冬になると気温が氷点下になるため、
水道管はエンビパイプでなく二層菅という水道パイプを使っています。
耐候性の高い外層と耐塩素水性の高い内層で作られており、二層構造で冬も凍らない給水用管材です。
金属継手に二層管を差込み、パイプレンチを使って袋ナットを締め込みます。
詳しい二層管の継ぎ方はこちらの方が書いているブログが参考になるかと思います。Kinoの自転車日記
道の整備にどのくらいかかったの?
なんと集落の方は、農道を自分たちで補修や整備をする関係で、土木・水道用の道具は皆さん持っていました。
いったい何屋さんかわかりません。道具代はかかっていません。すごい。
しかし、材料費や人件費はどうしてもかかってきます。詳細はというと、
水道工事業者委託 ¥186,450
生コン代金 ¥73,480
道路拡幅の用地買収費 ¥74,884
重機の燃料代 ¥23,880
作業日当(7名分) ¥103,000
合計:¥388,214
※この金額の支払いは、普段から集落の水道組合に加入して積み立てを行っていたので、
今回はなんとか支払うことができました。
高齢化が進み今後、水道設備を自治区の住民で維持していくことを考えるとやはり移住者を増やすしか手はないのではと考えさせられます。
また、今回は「農業用施設整備原材料支給」という形で、豊後大野市が私たちの住む行政区へ補助をしてくれました。
ありがたい…。
行政とのやりとりをしてくださった、自治会長さんに感謝感謝です。
私たちの住む家の1年間の水道料金は?
水道料金の上水に関してはこの地域の”独自のルール”があり、後に記事にてご紹介したいと思います。
上水料金12ヶ月 × ¥2,000(月平均) =¥24,000
下水料金12ヶ月 × ¥3,180 = (2人分)¥38,160
合計:¥62,160(2人分)
上下水道を合算しても、この金額は都市部では考えられない金額だと思います。
まとめ
・水道料金は安いが、集落(自治区ごと)の管理になるため管理・保守・点検・集金は全て内省する。
・水道に関わることは集落で暮らしていく上での必須の仕事である。(会社員の仕事より優先度が高い)
・作業した方の平均年齢は約75歳(自分を含めず)。パワフル高齢者。
・高い工事は依頼できず、材料と道具でみんなで作業することも。集落の水道組合加入者は全員参加。
・災害時でも、湧水を利用しているため水がない状況にはならない。
・水道の設備は、集落の組合の持ち物であり行政所有ではないため、自己負担が発生することも。
・それでも、美味しい山の湧水を飲める幸せ。
資源は0円だとしても、水の利用に関わることは集落の出ごと(区役)として参加が必須。
”蛇口をひねれば水が出てくることのあたりまえ”が覆された出来事でした。
(2020/07/21の出来事)
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